常連客の定義と来店頻度|何回来たら常連と呼べるのか

「あの人はもう常連だよね」。そう言うとき、根拠になっているのはたいてい顔を覚えたかどうかで、回数ではありません。

それでも困らない店は多いのですが、常連を増やしたいと考えた瞬間に困ります。定義がないものは数えられず、数えられないものは増えたかどうかも分からないからです。この記事では、自分の店で使える線引きの作り方を説明します。

「何回来たら常連」に共通の答えがない理由

結論から言うと、回数だけでは常連は定義できません。

5回来ているお客様が2人いるとします。ひとりは5年かけて年1回、もうひとりは5ヶ月で月1回。回数は同じですが、店との関係はまったく別物です。前者は「たまに思い出す店」で、後者は「生活に入っている店」です。

よく見かける「3回来たら常連」という言い方が使いにくいのは、この期間が抜けているからです。常連かどうかを決めているのは、回数ではなく頻度です。

なお、再来店・リピーター・常連客という3つの言葉の違いは、リピーターを増やす方法で整理しています。この記事では、そのうち常連客の線をどこに引くかだけを扱います。

常連は「期間 × 回数」で決める

自店の定義はこの形で書けます。

直近◯ヶ月のあいだに◯回以上来店したお客様を、常連と呼ぶ

あとは2つの数字を埋めるだけです。決め方には順番があります。

① 期間は「来店周期の4〜6倍」にする

自店のお客様がだいたい何日おきに来るかを考えて、その4〜6倍を期間にしてください。

週1回のペースなら1〜1.5ヶ月、月1回なら4〜6ヶ月です。短すぎるとたまたま続いた人まで常連になり、長すぎると来なくなった人が常連のまま残ります。

② 回数は「偶然では届かない数」にする

決めた期間のなかで、たまたまでは到達しない回数を選びます。目安はその期間に想定される来店回数の半分以上です。

週1回ペースで1.5ヶ月なら想定は6回程度なので、3回以上が線になります。この線を越えた人は、偶然ではなく意思で選んでいます。

業態ごとの目安

自分で決めるのが難しければ、次を出発点にしてください。1年ほど運用して、実際の人数を見ながら調整すれば十分です。

業態の例来店周期常連の線引き(例)
ランチ中心のカフェ・定食屋週1回1.5ヶ月に3回以上
ラーメン・そば・カレー2〜3週に1回3ヶ月に3回以上
居酒屋・バー月1回6ヶ月に4回以上
ディナー中心の専門店3〜6ヶ月に1回1年に2回以上

ディナー専門店の「1年に2回」を緩いと感じるかもしれませんが、年1回来るかどうかの店に2年続けて来ているなら、それは十分に常連です。基準は他店ではなく、自店の来店周期です。

定義すると、何が変わるのか

線を引く目的は分類することではありません。次の3つができるようになることです。

  1. 数えられる ── 「常連が増えた気がする」が「先月18人、今月21人」になります
  2. 対象を絞れる ── 全員向けの施策をやめて、常連向けと新規向けを分けられます
  3. 抜けに気づける ── 常連リストにいた人が3ヶ月来ていないことに、感覚ではなく記録で気づけます

とくに3つめが効きます。常連が来なくなるのは静かに起きるので、気づいたときには半年経っているというのがよくある形です。

常連比率を出してみる

定義が決まると、比率が計算できます。

指標計算式見るポイント
常連客比率常連客数 ÷ 実人数客層の厚み
常連売上比率常連客の売上 ÷ 総売上店の収益がどこに乗っているか
常連の来店頻度常連の延べ来店数 ÷ 常連客数関係が深まっているか

人数の比率より、売上の比率のほうが経営には効きます。人数で2割の常連が売上の6割を作っている店と、2割が2割しか作っていない店では、打つべき手が正反対になります。

常連を数えるのに、会員カードもアプリも要りません。

レジ横のQRコードの読み取り回数が、そのまま来店回数の記録になります。
EASY COUPONを見る(初期費用0円・月額1,000円)

常連比率はどれくらいが健全か

よく「2:8の法則で、2割の常連が8割の売上を作る」と言われます。ただしこれは飲食店を対象に検証された数字ではありません。目標として使うと判断を誤ります。

健全さを測るなら、比率の絶対値ではなく偏りすぎていないかを見てください。目安は次のとおりです。

常連売上比率状態次にやること
2割未満来るたびに一見客。売上が読めない再来店の仕組みを作る
3〜6割新規と常連が両輪。もっとも安定した状態この比率を維持する
7割以上少数の常連に依存。見た目は好調でも脆い新規が入れる余地を作る

常連が増えすぎた店に起きること

常連は多いほどいい、と考えられがちですが、7割を超えたあたりから別の問題が出てきます。実際に起きることを挙げます。

新規が入りづらい空気ができる

店主と常連が話し込んでいる店に、初めての人は入れません。悪意はなくても、入口で「自分の場所ではない」と判断されます。常連との会話は、新規客がいる時間帯ほど短くしてください。

値上げができなくなる

常連は価格を正確に覚えています。売上を常連に依存するほど、値上げの判断が心理的に重くなります。原価が上がっても動けない状態は、この構造から生まれます。

どこまで上げられるかを数字で判断する方法は、飲食店の客単価の平均で解説しています。

数人の生活変化で、売上が一気に落ちる

転勤、転職、引っ越し、家庭の事情。常連が店を離れる理由の大半は、店とは関係のないところにあります。売上の7割を10人が支えている店では、そのうち2人が離れただけで数字が崩れます。

常連を減らす必要はありません。常連を増やしながら、新規の入口も開けておく。この2つは両立します。

常連になるまでに、どこで止まるのか

お客様が常連になるまでには段があり、止まりやすい場所が決まっています。

段階状態ここで止まる理由
1回目 → 2回目試している次に来る理由を渡していない
2回目 → 3回目悪くないと思っている店の側から認識されていない
3回目 → 常連選択肢に入った来店の間隔が空きすぎて忘れられる

1段目についてはリピーターを増やす方法で詳しく扱っています。ここでは2段目と3段目を見ます。

2回目から3回目は「認識」で決まる

3回目に進むかどうかを分けるのは、料理の質ではありません。店の側が自分を認識していると分かった瞬間です。

「前回もありがとうございます」の一言で足ります。名前を覚える必要も、常連扱いする必要もありません。むしろ2回目で距離を詰めすぎると引かれます。

3回目から常連は「間隔」で決まる

ここまで来た人が離れる理由は、不満ではなく間隔が空いて忘れられることです。前回から想定周期の2倍が過ぎたら、思い出す手がかりが必要になります。

といっても連絡先を集める必要はありません。次に来たときに使えるものを会計時に渡しておけば、財布やスマホの中に手がかりが残ります。

客層によって、常連化しやすさは違う

首都圏2,106名を対象にした調査では、外食のうち初めての店を選ぶ割合に年代差がありました。20〜30代女性は約31%が新規店なのに対し、60代男性は12.7%です。

つまり、若い女性客が中心の店ほど新しい店に流れやすく、常連が育ちにくい構造にあります。これは店の努力不足ではありません。その層を狙う店は、常連比率の目標を低めに置いて、新規の入口を厚くするほうが現実的です。

出典:ホットペッパーグルメ外食総研「飲食店リピート実態&要因調査」(2018年2月・首都圏・n=2,106)

よくある質問

Q. 常連の定義は途中で変えてもいいですか

変えてかまいませんが、変えた月は前月と比較できなくなります。変更した日をメモに残して、次の月から新しい基準で数え直してください。

Q. お客様に「常連です」と伝えるべきですか

伝える必要はありません。線引きは店内の管理のためのもので、お客様に開示する種類の情報ではありません。常連向けの特典を作る場合も、条件は分かりやすい形(来店回数など)に置き換えてください。

Q. 名前を覚えないと常連にはなりませんか

なります。必要なのは名前ではなく、見覚えがあると伝わることです。「いつもの席でいいですか」で十分に成立します。

Q. 常連が離れたとき、追いかけるべきですか

個別に連絡を取るのは避けてください。負担に感じさせます。店として続けられるのは、いつ来ても同じ体験があるようにしておくことまでです。

Q. 常連を数えるのに、システムは必要ですか

不要です。1日1〜2組の新規なら手書きのメモで足ります。会計時にQRコードを読み取ってもらう仕組みがあれば、読み取り記録がそのまま来店回数になります。

まとめ

常連の定義に共通の正解はありません。回数だけでは決まらず、期間とセットにして初めて意味を持つからです。

自店の線引きは「直近◯ヶ月に◯回以上」の形で書けます。期間は来店周期の4〜6倍、回数はその期間の想定来店回数の半分以上。この2つを埋めれば、今日から数えられます。

そして数えられるようになったら、人数より常連売上比率を見てください。3〜6割がもっとも安定した状態です。7割を超えたら、好調に見えても新規の入口を開ける時期です。

EASY COUPONは、レジ横のQRコードを読み取るだけの仕組みなので、会員登録なしで来店の記録が残ります。常連の線引きを決めたあと、それを数えるための道具として使えます。

関連記事