飲食店の割引は何割が適正?粗利から逆算する割引率の決め方

「10%引きくらいなら大丈夫だろう」と考えて割引を決めていませんか。原価率30%の店の場合、10%引きは粗利を14%減らします。原価率が60%の店なら25%減ります。

割引率と、実際に失う利益の割合は一致しません。この記事では自店の原価率から適正な割引率を逆算する方法と、値引きより負担が軽くて喜ばれる方法までを解説します。

「何割引き」で考えるのが危険な理由

割引をすると売上は減りますが、原価は減りません。3,000円の料理を10%引いて2,700円で提供しても、その料理にかかった原価900円はそのままです。

つまり値引き分は、まるごと粗利から引かれます。ここを見落とすと「1割引きくらい」という感覚と実際の痛みがずれます。

関係を式にすると、こうなります。

粗利の減少率 = 割引率 ÷ 粗利率

原価率30%なら粗利率は70%なので、10%引きで 10 ÷ 0.7 = 約14%。1割引いたつもりが、利益は1.4割減っているということです。

自店の原価率を出す

割引率を決める前に、必ず自店の数字を出してください。他店の平均は役に立ちません。

原価率の計算

原価率 = 食材原価 ÷ 売上 × 100

月単位で計算するのが手軽です。ただし月ごとの仕入れには波があるため、3ヶ月の平均を見るほうが実態に近くなります。

メニュー単位で見ると精度が上がる

全体の平均原価率だけで判断すると、割引対象のメニューによって結果が変わります。

たとえばドリンクの原価率は10〜25%程度、揚げ物や魚料理は40%を超えることがあります。原価率の高いメニューに割引をかけると、想定以上に粗利が飛びます

割引の対象を選べるなら、原価率の低いメニューを含む条件にするだけで負担は変わります。

FL比率も見ておく

原価だけでなく人件費まで含めた指標がFL比率です。

FL比率 =(食材原価 + 人件費)÷ 売上 × 100

一般に60%前後が目安とされます。これが高い状態で割引をかけると、家賃や光熱費を払う前の段階で余裕がなくなります。原価率だけを見て「まだ割引できる」と判断しないでください。

割引率ごとに粗利がどれだけ減るか

原価率と割引率の組み合わせで、粗利の減少率は次のようになります。

割引率原価率30%原価率40%原価率50%原価率60%
5%引き7.1%減8.3%減10.0%減12.5%減
10%引き14.3%減16.7%減20.0%減25.0%減
15%引き21.4%減25.0%減30.0%減37.5%減
20%引き28.6%減33.3%減40.0%減50.0%減
30%引き42.9%減50.0%減60.0%減75.0%減

原価率50%の店が20%引きをすると、粗利は40%消えます。それを埋めるには、客数か客単価をそれ以上に増やさなければ元に戻りません

この表を見て、自店がどこまで許容できるかを先に決めておいてください。

割引率を決めたあと、それを毎回きちんと運用できるかが問題になります。

割引額と発生確率を店舗側で設定できる仕組みなら、決めた設計をそのまま反映できます。
EASY COUPONを見る(初期費用0円・月額1,000円)

割引の上限を決める2つの考え方

① 追加購入を見込む場合

「1,200円以上で200円引き」のように条件を付けて、お客様に一品追加してもらう狙いがある場合です。この場合の判断式は次のとおりです。

割引額 < 追加購入が見込める金額 ×(1 − 原価率)

計算の詳細と早見表はクーポンで儲かる仕組みにまとめています。

② 追加購入を見込まない場合

来店のきっかけとしてだけ使う場合は、割引額をそのまま新規客1人を獲得するための費用として考えます。

たとえば300円の割引で1人来店するなら、獲得単価は300円です。グルメサイトの掲載費や広告費と同じ土俵で比べられます。

この見方をすると、割引はコストではなく投資として判断できるようになります。1人あたりいくらまで出せるかは、そのお客様が2回目以降に来る確率で変わります。

値引きより「おまけ」のほうが有利なケース

ここが最も見落とされている点です。同じ「お得感」を出すなら、値引きより一品サービスのほうが店の負担は小さくなります

客単価3,000円・原価率30%の店で比べてみます。

やり方お客様が感じる価値店の実際の負担
300円の値引き300円300円
通常400円のドリンク1杯サービス(原価率25%)400円100円

お客様が感じる価値は400円のほうが大きいのに、店の負担は3分の1です。原価率の低いメニューを選ぶほど、この差は開きます。

値引きは額面がそのまま粗利から引かれますが、おまけは原価分しか減らないためです。ドリンクやサイドメニューなど、原価率が低くて満足度の高いものがある店ほど有効です。

ただし1つ注意があります。消費者庁の解釈では、値引きは「景品類」に当たりませんが、物品のおまけは「景品類」に当たります。総付景品として提供できる上限は、取引価額1,000円未満なら200円まで、1,000円以上なら取引価額の10分の2までと定められています。客単価3,000円なら600円までなので、通常の一品サービスであれば範囲内に収まります。

参考:消費者庁「総付景品について」「景品類ではないもの」

やってはいけない割引の決め方

他店の割引率をそのまま真似する

原価率が違えば適正な割引率も違います。原価率25%の店の20%引きと、原価率55%の店の20%引きでは、失う粗利がまったく違います。

常時割引にする

いつでも割引がある状態になると、お客様はその価格を通常価格として認識します。元の価格で買ってもらえなくなるため、値引き前提の商売から抜け出せなくなります。

原価率の高いメニューを割引対象にする

看板メニューが原価率の高い料理である場合、そこに割引をかけると粗利が急速に減ります。集客の目玉にしたい気持ちは分かりますが、数字で確認してから決めてください。

切りのいい数字で決める

「なんとなく10%」「きりよく500円」で決めていないでしょうか。粗利率から逆算した数字は、たいてい半端になります。半端でかまいません。

よくある質問

Q. 結局、何割引きが正解ですか

原価率によって変わるため、共通の正解はありません。目安として、粗利の減少率が20%を超える割引は、それを埋めるだけの来店増が見込めるかを確認してから実施してください。原価率30%の店なら15%引き前後がその境目です。

Q. ランチとディナーで割引率を変えてもいいですか

変えるべきです。ランチは原価率が高く粗利が薄いことが多いため、同じ割引率でも痛みが大きくなります。時間帯ごとに原価率を出して別々に決めてください。

Q. 原価率が分からない場合はどうすればいいですか

まず1ヶ月分の食材の仕入れ合計と売上を出してください。おおよその数字でも、割引率を感覚で決めるよりはるかに精度が上がります。

Q. 割引ではなく値上げを検討すべきでしょうか

粗利が薄い状態で割引を増やしても、体力を削るだけになります。FL比率が高い場合は、割引の設計より先に価格そのものを見直すほうが効果的なことがあります。

まとめ

割引率を決めるときに必要なのは、感覚ではなく粗利の減少率 = 割引率 ÷ 粗利率という関係を理解することです。

1割引きは1割の損ではありません。原価率30%なら1.4割、原価率60%なら2.5割の利益が消えます。まず自店の原価率を出し、この表で許容できる範囲を確認してください。

そして、値引き以外の選択肢も検討する価値があります。原価率の低い一品をサービスするほうが、お客様の満足は大きく、店の負担は小さくなります。

割引額を管理画面から変更できる仕組みなら、季節や売上の状況に応じて調整できます。EASY COUPONは最低購入金額と割引額を後から変更できるため、この記事の計算結果をそのまま設定に反映できます。

関連記事