飲食店の客単価の平均といくらまで上げられるか

客単価を上げたいと思ったとき、最初に知りたくなるのが「よその店はいくらなのか」です。ところが調べても、信用できる平均値は出てきません。
この記事では、公的な統計に実際は何があるのかを示したうえで、平均より役に立つ問い ──「自分の店は、客数を減らさずにいくらまで上げられるのか」に、計算で答えを出します。
「客単価の平均」は業界統計に存在しない
外食産業の代表的な統計である日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」は、234社・37,272店(2026年7月度)という規模で客単価を集計しています。ただし公表されるのは前年同月比だけで、実額(円)は出てきません。
| 業態(2026年7月度) | 客単価の前年同月比 |
|---|---|
| 全体 | 103.5% |
| ファーストフード | 103.4% |
| ファミリーレストラン | 103.6% |
| パブ・居酒屋 | 101.5% |
| ディナーレストラン | 103.9% |
| 喫茶 | 103.4% |
分かるのは「業界全体で3.5%上がった」という動きだけで、「居酒屋の平均は◯円」という数字は、どこにも公表されていません。
理由は、同じ「居酒屋」でも立地・席数・営業時間で単価が数倍違うからです。平均を出しても、どの店の参考にもならない数字になります。
あるのは「お客様が1回の外食で払った額」
店側ではなく消費者側なら、実額の調査があります。ホットペッパーグルメ外食総研の外食市場調査によると、2026年7月の外食単価は2,908円でした(東名阪3圏域)。あわせて外食実施率は69.0%、外食頻度は月3.85回です。
ただし、この2,908円を自店の客単価と比べてはいけません。2つはまったく別の数字です。
| 外食単価 2,908円 | あなたの店の客単価 | |
|---|---|---|
| 何を測っているか | 1人が1回の外食で払った額 | 売上 ÷ 客数 |
| 含まれるもの | 飲み会・記念日・ランチをすべて平均 | 自店の利用シーンだけ |
| 対象 | 東名阪の消費者 | 自店に来た人 |
ランチ中心の定食屋がこの数字を目標にすれば経営が壊れますし、コース中心の店が「上回っているから安心」と考えるのも誤りです。比較対象として使える数字ではありません。
出典:一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」2026年7月度/ホットペッパーグルメ外食総研「外食市場調査」2026年7月度
まず自店の客単価を正しく出す
客単価は売上 ÷ 客数です。単純ですが、2箇所で間違えやすいところがあります。
「組数」ではなく「人数」で割る
2人客が10組なら、客数は20です。組数で割ると数字が倍近くふくらみ、他店とも過去の自店とも比較できなくなります。
ランチとディナーは必ず分ける
この2つを混ぜた平均には、ほとんど意味がありません。ランチ900円・ディナー3,500円の店で合算すると1,800円前後になりますが、1,800円で提供している時間帯は1つもないからです。
分けて出すと、上げる余地がどちらにあるかが見えます。多くの個人店では、上げやすいのはディナー側です。
いくらまで上げられるか ── 客数の減少で考える
値上げの上限を決めるのは、平均でも相場でもありません。客数が何%減るまで、いまの粗利を保てるかです。
値上げをしても原価は変わらないので、上乗せした分はまるごと粗利になります。だから多少客数が減っても粗利は落ちません。その「多少」が何%かは、次の式で出せます。
許容できる客数の減少率 = 値上げ率 ÷(粗利率 + 値上げ率)
粗利率70%の店が5%値上げするなら、5 ÷(70+5)=6.7%。客数が6.7%減るまでは、粗利は今より減りません。
| 粗利率 | 3%値上げ | 5%値上げ | 10%値上げ | 15%値上げ |
|---|---|---|---|---|
| 60% | 4.8%まで | 7.7%まで | 14.3%まで | 20.0%まで |
| 65% | 4.4%まで | 7.1%まで | 13.3%まで | 18.8%まで |
| 70% | 4.1%まで | 6.7%まで | 12.5%まで | 17.6%まで |
| 75% | 3.8%まで | 6.2%まで | 11.8%まで | 16.7%まで |
表の見方は「この%まで客数が減っても、粗利は値上げ前と同じ」です。1日30人の店が10%値上げするなら、3〜4人減っても粗利は変わりません。
粗利率が高い店ほど、許容できる減少幅は小さくなります。もともと1人あたりの粗利が大きいので、1人失う痛手も大きいからです。カフェのように粗利率の高い業態が値上げに慎重になるべきなのは、この理由です。
自店の原価率・粗利率の出し方は、飲食店の割引は何割が適正?で解説しています。同じ数字を、割引の側から使った記事です。
値上げの直後は、客数が必ず振れます。
「◯円以上で使える」条件つきの割引を併せると、上がった印象をやわらげながら客単価を保てます。
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値上げ幅の目安と、越えてはいけない壁
1回の値上げは10%まで
上の表では15%でも計算上は成立しますが、実際にはお客様が「上がった」と感じる幅には別の限界があります。目安は1回あたり10%までです。
必要な幅が大きいなら、1年に2回に分けてください。5%を2回のほうが、10%を1回より客離れが小さくなります。
価格の「壁」をまたがない
980円から1,080円への値上げは、金額としては10%ですが、お客様の受け取り方は「1,000円を超えた」になります。心理的な壁をまたぐ値上げは、幅以上のインパクトを持ちます。
同じ理由で、1,980円→2,080円、2,980円→3,080円も要注意です。壁の手前で止めるか、いっそ壁を大きく越えて価値を作り直すか、どちらかにしてください。壁のすぐ上が一番損をします。
看板メニューは最後に上げる
お客様が価格を覚えているのは、いつも頼む1〜2品だけです。そこを上げると値上げが全体に及んだと感じますが、覚えられていないメニューを上げても気づかれません。
価格改定は、注文頻度の低いものから順にやってください。
値上げの前に、まだできること
客単価を上げる方法は価格改定だけではありません。抵抗の少ない順に3つあります。値上げは最後です。
- 品数を増やす ── 「あと一品」「ドリンクをもう一杯」。単価はそのままで、注文数が増えます
- 単価の高いほうへ誘導する ── 松竹梅を作る、セットを用意する。選ばれる位置を変えるだけです
- 価格そのものを上げる ── 上の2つをやり切ってから
①と②は、お客様が自分で選んだ結果として単価が上がるので、値上げと受け取られません。「最低◯円以上でクーポンが使える」といった条件も、②の一種です。
この考え方は、クーポンで儲かる仕組みで数字とあわせて説明しています。
やってはいけない上げ方
全品を一律で上げる
計算は楽ですが、お客様から見ると「全部上がった」以外の何物でもありません。メニューごとの原価率は違うので、一律に上げると原価率の低いメニューだけが不当に高くなります。
量を減らして価格を据え置く
気づかれないと思われがちですが、常連ほど気づきます。そして値上げより不誠実だと受け取られます。上げるなら価格を上げてください。
黙って上げる
掲示は必要ありませんが、常連に聞かれたときに答えられる理由は用意しておいてください。「仕入れが上がったので」で十分です。理由がある値上げは、思っているほど嫌われません。
客数が減ったらすぐ戻す
値上げ直後は必ず客数が振れます。判断は最低2ヶ月待ってください。1週間で戻すと、価格が信用されない店になります。
よくある質問
Q. 客単価はどれくらいの頻度で見直すべきですか
客単価の記録は毎月、価格の見直しは年1回で十分です。ただし原価が10%以上動いたときは、その都度計算し直してください。
Q. 客単価と客数、どちらを優先すべきですか
席が埋まっていないなら客数、埋まっているなら客単価です。満席の時間帯がある店は、客数を増やす余地がないので単価でしか売上を伸ばせません。
Q. ランチだけ赤字なのですが、やめるべきですか
ランチ単体の粗利が、その時間帯の人件費と光熱費を上回っているかで判断してください。上回っていれば、家賃の一部を負担してくれている状態なので、やめると赤字が増えます。
Q. 値上げと割引を同時にやってもいいですか
問題ありません。むしろ、値上げの直後に「読み取ると割引が出る」といった仕組みを入れると、上がった印象がやわらぎます。ただし平均割引額が値上げ幅を超えないよう設計してください。
Q. 適正な粗利率はどのくらいですか
飲食店なら60〜70%が一般的な範囲です。ただし業態で大きく変わるため、目標にするより、まず自店の実数を出すことを優先してください。
まとめ
飲食店の客単価に、比べられる業界平均はありません。公表されているのは前年比だけで、実額の平均は存在しません。消費者側の「外食単価2,908円」は、あなたの店の客単価とは別の数字です。
代わりに使えるのが、許容できる客数の減少率 = 値上げ率 ÷(粗利率 + 値上げ率)という式です。粗利率70%の店が5%上げるなら、客数が6.7%減るまで粗利は落ちません。
上げ方の順番は、品数 → 誘導 → 価格。1回の値上げは10%まで、価格の壁はまたがない、看板メニューは最後。そして判断は2ヶ月待ってからです。
EASY COUPONは、クーポンを使える最低購入金額を店舗側で設定できます。値引きをしながら、同時に客単価を引き上げる条件設計が、レジ横のQRコード1つでできます。
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